満ち足りて優しく生きるための覚書

自分を好きになる、自分に生まれてよかったと言える、満足して、自分にも人にも優しくなれる、そんな人生にしたい。

ネバベキ人間

長年の夢を叶えて、自分の店をオープンさせたが、楽しむ余裕は全くなかった。

とにかく軌道に乗せなければ。お客様に来ていただかなくては。

自営って、自分が想像していたよりはるかに大変だった。

一日のほとんどの時間、お店にいて、やることがたくさんあって、全て自分一人でやらなければならないので、辛くても投げ出すわけにはいかなかった。一年目は、自分が座る椅子さえ買ってなかった…。そんな座る余裕なんてなかった。

自分の事よりお客様最優先だった。

お客様の無理難題にもできる限り応え、「No」と言うことはほとんどなかった。

朝早くから店に来て、家に帰るのは午前様になることも多々あった。帰って寝るだけ、のような生活。週休一日。

自分では、体力や持続力はあるつもりでいたけれど、そんな生活が続いて、だんだん身体がおかしくなってきた。

朝起きると腕がしびれて、指がこわばってしばらく曲がらない。腱鞘炎にもなりかけている。背中は痒くて仕方ない。

こんなになってもまだ無理していることにも気が付かなかった。やって当たり前と思っていたから。

毎日こなすのだけで精いっぱいで、自分の事にはかまってられなかった。

常に、やらねばならない、やるべき、頑張るべき、というネバベキ人間だった。

 

忙しかったお陰で、彼のことも少しずつ忘れられそうな感じだった。

たまにふと、今何してるかな、どこにいるのかな、と思い出してはメールしてみたが、届かず返ってきてしまっていた。せっかく教えてもらったメアド、間違ってたみたい…。どうしようもなかった。

オープン時に彼がお店に来てくれた後、やっぱり少しだけ占いに行ってしまった。

言われることはだいたい同じで、「友達としての縁はあると思うけど、結婚はないね。」と。まぁ、仕方ないね…。

一度会えただけでも充分だよ。これ以上望んではいけないよね。本当はまた会いたいけど。彼がやりたいことやって、幸せでいてくれたらいいな。またいつか日本に帰って来た時には、お店に立ち寄ってくれたらいいな。薄い希望だった。

 

とにかく、この頃は、お店を軌道に乗せることに集中して、やるべきことに追われ、忙しくて、身体もギシギシ、ガチガチに凝り固まり、自分の時間は全くなく、辛くても走り続けなければならなかった。

お客様最優先だったし、占いにも頼ってたし、彼のことも思い出していたし、まるで自分自身がないことには変わりなかった。