変わるきっかけ
毎日全力でお店の営業を頑張っていたよ。
なんとかお客様が少しずつついてきて、落ち着いてきて、ちゃんと維持できている。
やりたいことはやれている。
でも、経営にも生活にもあまり余裕はなく、しびれやこわばりなど身体の不調は続いていた。
なんで、やりたかったことをやっているのに、こんなに辛いんだろう、どうやったらここから抜け出せるんだろうって思っていた。
こんなに頑張っても楽にならない…。このまま一生頑張り続けなければならないのかな。息が持たないな、とも思っていた。もちろん、お店を辞めたいとは思わなかったし、このまま続けるんだろうなと、わかってはいたけれど。もう少し楽に楽しくできないものか。
お客様との会話は楽しかったし、お客様が良い時間を持てていると思うとホッとしたし、頑張ってるねって褒めてくれると嬉しかった。
そんな頃、また、突然、彼が来店してくれた。
本当にびっくりした。もう会えないと思っていたから。嬉しかった――。
なんと前回の来店から3年が経っていた。
海外から帰ってきて、私のお店の周年記念のはがきを見て、来てくれたんだ。
いつかまた来てくれるかも、と思ってはがきだけは毎年実家に出していたんだよね。
「3年も頑張ったんだ、すごいねー!」って何度も言ってくれた。
嬉しかったし、ありがたかった。その言葉のために頑張ったんだもん。
そして近況報告、彼の海外での仕事や生活など聞いた。自由にやりたいことやって楽しそうでいいなぁ。フットワーク軽くどこへでも出かけて行って、頑張ってて、楽しんでる。本当にそんな生き方に憧れるよ。
ビザのトラブルで一時帰国しなければならなくなったが、また手続して海外に行く予定とか。数か月は日本にいるとのことだった。日本にいる間にまた会えるかな…。
そうそう、メール送れなかったことを話した。
間違ってたみたい、って言って、彼の目の前でメールしてみたら、なんと送れたんだよ。なんで今まで送れなかったんだろう、今でもわからない。本当に不思議。
彼の方でも、海外から私にメールをしてくれたらしいのだけど、やっぱり送れなくて返ってきてしまってたって。
本当に神様のいたずらなのか、連絡が取れなくて、どこにいるか、何をしているのか全く分からなかった3年間だった。
いやしかし、なんか夢みたいで。また会えるなんて。
やっぱり、私の頑張るパワーの源として、時々会えたらいいのにな。
彼女さんとの結婚はどうなったのか、怖くて聞けなかった。指輪はしてなかったのが救いだった。
ひとしきり話した後、帰って行った。
せっかく、彼のことを思い出す日が少なくなってきて、薄らいできたかと思ったのに。顔を見たらやっぱり気持ちが再燃してしまった。寝た子を起こしてしまった感じ。
この日本滞在中に、何度かお店に来てくれた。
思い切って、写真をお願いしてみた。初めて2ショット撮らせてもらったよ。
そして、写真を見るたびに切なくなって。
もし、彼女さんと結婚してしまったら、その後に気持ちを伝えることはできなくなってしまう。一生言うまいと思ってたけど、もし、万が一のことがあった時、気持ちを伝えなかったことを後悔しないだろうか?
と思ったら、今までの思いがぶわーっと上がってきて、ダメだとはわかっているけど、知ってもらうだけでもいいから、自分のために伝えたい、と思い始めた。
彼にとっては迷惑な話だと思うけど。
諦めるためにちゃんと告白して振られよう、と思ったんだ。本当に、思い詰めて、どうやって言おうか考えて頭グルグルしてた。
そうして、「話したいことがあるのでもう一度お店に来てほしい」とお願いした。
彼は来てくれた。忙しいと言って断らなかったのがすごいなと思う。
何の話かは察していたかもしれない。会って仕事の話とかしていて、なかなか切り出せなくてモヤモヤしていた。が、途中で、彼女さんの話になった。なんと、別れたというではないか。びっくりだった。とても長い年月お付き合いしていて、結婚話も進んでいるものと思っていたから。まさか、そんなことになっていたとはこれっぽっちも思ってなかった。
心臓がバクバクした。
そんなことなら、今、わざわざ告白して振られることもないんじゃない?
この先だって、会えるかもしれないよ。
一大決心して告白しようと思っていたのに、すっかり気持ちが抜けてしまった…。
わざわざ「話があるからお店に来て」と呼び出しておいて、世間話で終わってしまった。彼にとってはホッとしたかもしれないね。
本当は、その時に思い切って言ってしまったらよかったのかもしれない。でも言ったら、振られてつながりが切れてしまうかもしれないと思うと怖くて言えなかった。言わなかったら、まだつながっていられるかもしれないんだもんね。
私の気持ちはとても複雑だった。彼のことが大好きで。
彼がフリーでいてくれるのはとても嬉しい。でもだからと言って自分が彼とお付き合いできるかと言ったらまるで自信はなかった。
コンプレックス抱えて自信のない私は、彼とは不釣り合いで、お付き合いして彼の横に立っている自分を全然イメージできなかった。女性として好きになってもらえる自信はなかったし、自分をさらけ出す勇気もなかった。年もだいぶ違うしね。やっぱり友達でいる方がいいんだよ、と言い聞かせた。親友みたいになれたら一番いいのにな。
もし、彼に新しい彼女さんができて結婚してしまったら、と思うとやるせなかった。
お店も忙しくて目一杯で、全く余裕がなかった所に、彼との再会でさらに気持ちが再燃し、気持ちも頭もグルグル上がったり下がったり堂々巡り。この先、どうやって自分を立て直したらいいのかわからなくなって、占いに行ってしまった。以前にも伺った占い師さん。
そこで、「彼を諦めることができないのなら、とことん好きでいたらいい。諦めることを諦めたら?もしかしたら、あなたたちはツインソウルかもしれないね」と言われた。
初めて「ツインソウル」という言葉を知った。
ツインソウルって何?