コンプレックス
私は本当に自信がなかった。
その理由はいくつもあるけど、最大の一つは、身体の一部分がちょっと奇形なことだった。
それも胸だ。胸は女性にとっては大事な部分。それが普通と違う、というのが私にとって自信が持てない大きな理由だった。
看護師の友人に言わせれば、「そんな人たくさんいるよ。全然問題ない」って。
そうは言うけど、気になるよ。気にしないでいいと言われても。
大したことないって言わないで。
私にとっては長年辛い思いをしてきたんだから。
人にとっては大したことなくても本人にはとても大変なことなんだ。
気にしても、どうしようもないのもわかってる。
遺伝だから。親を恨んでも仕方ないのもわかってる。
でも、悲しい。なんでこんな身体に生まれてしまったんだろうって。
生きるためには全然問題ない。もっとつらい身障者の人だっている。病気の人だっている。健康に生きていられるだけ幸せなはずなのに。
でも、見るからに不細工な胸。嫌いだった。見るたびに悲しくなる。
子供の頃、水泳を習っていたけどやめた。
温泉旅行にもほとんど行ったことがない。
見られたくなかったから。
当然、恋にも自信が持てない。
自分は女性の欠陥品と思っていたから、積極的にもなれず、叶わない恋ばかり。
だって、こんな身体の自分、魅力ないでしょ?どうせ好きになってはもらえない、嫌われる、って思ってた。この胸見たらがっかりするよね、って。
例えば、よく、彼が浮気したことを知って、彼女が「許せない!私というものがありながら浮気するなんて!」というシーンがあるけれど、そういう言葉が言えるのは自分に自信がある人なんだなって思う。私なんて、「仕方ないよね、私は浮気されても文句言えない。魅力ないもんね。」って思ってたもの。
そして、おしゃれにも興味が持てなかった。洋服を見るのが苦痛。
アクセサリーも苦手。だって、外をいくらかわいく飾ったって、中身がこれじゃあがっかりだよ、って。女の子としての楽しみを味わうことができなかったなぁ、って今では子供の頃の自分を不憫に思う。
自分のダメなところばかり目について、自分を卑下して、そんな人に魅力を感じるわけがないよね。身体が原因かもしれないけど、嫌がられるのはそこじゃなくて、それを言い訳にして自己卑下して鬱々としていることだったのに。
この胸を気にしないで、大丈夫と信じて生きる道があるなんて、気づきもしなかった。
本当に大事なことは、目に見える身体じゃなくて、それでもいいんだって、それよりももっと大事なことがあるんだって、前向きに生きる精神力だった。イヤ、わかってはいたよ、頭では。でも、気持ちが認めたくなかったんだ。これでもいいって受け入れられなかったんだ。だから自分が嫌いだった。
いろいろ考えたよ。女性とは何か、とか、魅力とは何か、とか、何が大事で最優先することなのか、とか。
そういうことに気が付けたのも最近のこと。
ようやく、自分を受け入れられるようになったかな。
やっぱり見てて不細工で好きではないけど、「もういいや、ここにこだわるのやめよう」って思えるようになった。
今までは、ものすごく嫌いだ!ってそこに一点集中してたけど、今はそれ以外のことに気を向けられるようになり、思いの比重が軽くなって来たんだ。
コンプレックスを完全に克服できたかはわからない。でも、前よりはましになって来たと思う。何がきっかけで、吹っ切れたか、ということもおいおい書いて行けたらと思う。